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今の家へは、温泉がぬるいというのを承知の上で越してきた。
「お前、往診に出てた?」
今泉は面喰つてこれも徳次の眼の中をのぞきこんだ。二人の間には恐しく判りにくいものが突然はさまつたやうに思はれた。
一わたり済むと、練吉は最後にもう一度注意深く病人の顔をぢつと眺め、
その二つとも何か危険さを伴つていただけに、妊婦である盛子への影響を恐れたのだらうか。それもたしかに、あることはあつた。盛子は、鬼倉との時もさうだつたが、消防事件の時も、後で聞いて並々でない神経性な不安を現した。
と、小谷はひとり言にしては大きい声で云つた。が、代りがないので又水の中へ放つた。
「もうそんなにおよろしいんですの?すつかり御無沙汰していました。ほんとうに!よくおいでになれましたわねえ」
練吉は小学校時分のことを思ひ出したのかふいにをかしさうに笑ひ声を立てた。
「いや、あれは私が勝手に頼んで来てもらつたんですからな、御心配はいりませんよ」
病人は眼を開けて、しばらくこの息子とはちがふ医者を眺めた。軽い不審と失望の色が浮かんだやうに見えたが、すぐに閉ぢて、かすかにうなづいた。
「なんだつて、脳溢血?――そいつあ大変だねえ」
彼女はその表情を少しもくづさずにすつと引き下つたが、間もなく帰ると、
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